小径車のパニックブレーキによるフロントタイヤロック回避のためにアンチロック・ブレーキ・システムを装着してみました
ブレーキ周りを考えている時にたまたま見付けた自転車用ABS。
今回のカスタムで大きなポイントのひとつとなる、自転車用ABS(Anti-lock Brake System)の『OUTBRAKER ABS』が届きました。
自動車は一般的に普及して久しくオートバイの世界にも普及してきたABSですが、自転車はというとSHIMANOが開発しているとのニュースはありますが一般的かといえばまだのようです。
ABSはブレーキのロックを防ぎ、タイヤのグリップ力最大値で効率よく停止するためのシステムです。
ただモーターの力によって漕ぐ力をアシストする代わりにバッテリーを搭載することで重量が増したE-BIKEが相当な勢いで普及してきた昨今、自転車にも普及し出すのではないかと予想できますし現在小さなメーカーではVブレーキ用のABSや今回のような油圧ブレーキ用のABSが販売されております。
このポストでは購入から開封レビュー、装着イメージ、実際装着して7,000km以上走っての感想やマウント形式による制動力の変化についてまとめてみました。
Contenst
自転車用ABS『OUTBRAKER ABS』を購入する
購入するにあたりいろいろ調べてみた結果、OUTBRAKERのWEBサイトは.euと.comの2つあり、.comアカウントの運営が韓国にあることやその繋がりで日本国内でも群馬県に代理店があることもわかりました。
今回のカスタムでAliexpress初購入にチャレンジしたこともありましたので敢えてEU圏のサイトで購入を決めました。
あと何気にファビコンが.euはOUTBRAKERのロゴで、.comはWordPressのままなのも気になった要因のひとつです。
こういう細かいところ、個人的に結構気にしちゃうんです。
- OUTBRAKER [.eu] ※re:codecが購入したサイト
- OUTBRAKER [.com]
ただ.comは購入するにあたり、.euにはないブレーキメーカーを選択することができます。きっとそれぞれのメーカーに合わせた規格(オイルライン取付)なのでしょうか。
サイト上に掲載してある図面の形状がそんなに大きく違わないのに、なぜキャリパー用とレバー用があるのだろうという疑問がありましたが考えてみれば至ってカンタンです。
キャリパー用とレバー用では『オイルの流れが逆」なんです。
レバーを握ると充填されたオイルへの圧力がキャリパーのポッドを押し出す仕組みなのでレバーに直接取り付けるタイプはキャリパータイプと異なりオイルの流れは逆になります。
きっと油圧弁の構造上逆向きでは機能しないと想定します。(いつか試せる時があればやってみます)
外見上のわずかな違いはありますが、ROAD用とMTB用の性能的な違いはわかりません。
どういう取付を望むか、自分の自転車や用途に合ったタイプを選ばないといけませんので注意が必要です。
MTBで山道を本気で走るとして、刻々と変わる路面や坂の状況でブレーキレバー近くに付いていた方が乗ったまま効き具合を調整できるという理屈は理解できます。
12月1日に注文し、12日に到着ということで2週間も掛からず手元に届きました。
ただし途中税関手続きが進む中、輸入関税/消費税対象とのことで¥2,300-を徴収されましたがオンライン決済で済みましたので到着日が遅れるようなことはありませんでした。その変わり支払総額が増えたということになりましたのでご注意ください。
発送元はイギリスかな?と思ってましたがスペインでした。
では開封していきます。
OUTBRAKER ABS – MTB
私は今回、MTB用キャリパータイプをチョイスしました。正しいかどうかはわかりませんがその理由についてのヒントは後ほど記載します。
併せてブレーキホースアダプターも購入しました。
本体と0.9mm六角レンチ、マニュアル、取付の際の注意事項&オンラインマニュアルのQRコード、左上のビニール袋がブレーキホースアダプター(箱の中に押し入れられてました)になります。
英語、スペイン語、中国語、韓国語の片面2カ国語、計4カ国語で記載されており、キャリパータイプとレバータイプ共に併記されているので共通なのでしょう。
ディテール2と5の入側に『▶三角矢印』がプリントされておりますが、これがオイルの流れる方向を指しているのでしょう。
0.9mm六角レンチ
ABS本体をブレーキラインに組み込んだ際、調整ダイヤルの向きを最終的に固定するためのモノだと思います。
ブレーキホースアダプター
パッケージ
SHIMANO BH59 / 90 ROAD Connecterと記載があります。
SHIMANOのブレーキホースでスタンダードとハイパワー用があるということですね。
インサートはBH90用(ハイパワー銀)3個、BH59用(スタンダード金)3個、オリーブ3個、コネクティングボルト3個と通常のオイルライン接続パーツなのですがメインはOUTBRAKERのロゴが記載された左のパーツ、アダプターです。
両側M8(メス)で切られていて、真ん中で絞られているアダプターです。当初は何気ない普通のメス・メスのパイプなのかなと思ったのですが装着例を眺めていてわかりました。
このABS(油圧バルブ)本体はオイルの流れる向きが決まっています。そして一方がオス、一方がメス。
「あ、なるほど」
装着イメージが閃いたのでここは敢えてキャリパータイプでいこうと決めて購入に踏み切りました。
巡航スピードや走る環境、積載重量、もちろん体重でもブレーキの効きは変わります。そこはせっかくABSを装着するので気軽に調整したい。
一度降車して調整しないといけないキャリパー装着や手元から遠くなるレバー装着はせずに、乗りながら調整できる位置で一番楽に手が届く場所であるステムに何らかでABS本体を固定するイメージです。
このイメージ通りできればおもしろいと思います。
OUTBRAKERの一式実ウェイト
カタログスペックでのウェイト25gでしたのでほぼ変わりありません。
.euでの価格は€218.39(アダプター含)でしたので、概ね€1=130円としてざっくり2.8万円、輸入関税/消費税合わせて3万を超えます。.comで同商品が$219ですからざっくり2.5万円、輸入関税/消費税は掛かって3万切るくらいとなります。
ミニベロフォールディングバイクのパーツとして個人的に高いと思うか安いと思うかは装着後、いろいろ試した後に判断したいと思います。
待ちに待った自転車用ABS。装着できる日が待ち遠しいです。
ここまでで今回のカスタム、完成まで1/3過ぎたくらいだと思います。
装着して7,000km以上走った感想とマウント方法での性能の違い
どうしても人通りの多い街中走行、また車道をそこそこのスピードで走ってても自動車や歩行者などの急な事態でパニックブレーキ、緊急ブレーキは多くなります。
OUTBRAKER ABSは体重、地形状況、ブレーキシステムなどに基づいて制動力を調整できます。
この『制動力の調整』とはレバーを握って生じる油圧の上限を調整することです。
レバーの握る強さが強くなれば油圧の上限は上がります(高くなる)。その油圧の上限をダイヤルによってそれ以上上がらないようにカットするということです。
試しにABSを取り払った状態で乗ってみましたがあってもなくてもブレーキが持つ初動からのフィーリングに変化はありませんでしたから油圧の上限だけの調整です。
車重と体重、それとブレーキシステムの性能でダイヤル(効きの調整)は変わりますが、セッティングが合ってしまえばそれこそフロントフルブレーキングでもロックすることなくある意味『ベタ止め』くらいの感覚になります。
セッティングが決まってから過去一番のパニックブレーキでもリアタイヤが浮くようなことはありませんでした。
パーツとしては若干高価ですが、個人的には今回のカスタムでGates Carbon Drive、Shimano ALFINE 11と同じくらいに満足度が高いパーツです。
しかしその後マウント方法やマスターシリンダーを換えたことでセッティングの変更をすることになりましたのでシェアします。
ここでいう『効き』は『ABSの介入具合』のことです。
OUTBRAKERを最も効かせる(最も介入する)とフルブレーキしてもブレーキはまったく効かなくなりますし、逆に最も効かせない(介入がない)と直結ですから通常のブレーキ性能となり、レバーの握りを強くすればロックします。
先にも書きましたがOUTBRAKER ABSは0(介入なしの直結状態)から時計回りに24段調整ができ、24段(最も介入する)ではフルブレーキしてもブレーキが効きません。(実体験)
カスタム当初はマスターシリンダーが『MAGURA HS33』、キャリパーが『hope RX4(ポストマウント)』でした。この時はダイヤル15〜16、中間から3〜4ほど介入を強め(ブレーキが効かなくなる)の方向にしてました。要するにこの組み合わせは制動力が高いのでABSの介入を若干強めにしてます。
まずキャリパーを『hope RX4+(フラットマウント)』に換えたところ逆に9〜10、中間から2〜3ほど介入を弱める(ブレーキが効く)方向になりました。この組み合わせでは制動力が下がったので介入を弱めにしたということになります。
キャリパーの性能は同じはずですし、ブレーキパッドも同じですからマウント形式が変わったこと以外理由がありません。
その後ディスクローターをShimano RT-MT900 → RT-CL900に換装しましたがOUTBRAKER ABSのセッティングは同じままでした。(ローターを換えても制動力に変化はなかったことになります)
そして最後にマスターシリンダーを『MAGURA MT4』へ換えたところコントロール性も然る事ながら制動力にも大きな変化があって、調整の結果12前後、ほぼ中間がベストなセッティングになりました。
この経験から結果としてフラットマウントは制動力が高くないという実感です。
そもそもブレーキ性能をそこまで求めないロードバイク用の規格ですからディスクローターサイズも最も小さいφ140mmかφ160mm限定(ディスク径が大きくなれば制動力は上がる)ということで最も求める性能は軽量化と空力なのだろう、というのが個人的結論です。
OUTBRAKER装着後のブリーディングの注意事項
組み付け当初やメンテナンスで気が付いたのですが、ブリーディングをする際は必ずOUTBRAKERのダイヤルを0にします。
マスターシリンダーやキャリパーに直付けしている場合はわかりませんが、アダプターを付けてオイルライン中間にOUTBRAKERを装着するとどうしても混入エアがなかなか抜けません。
ただでさえブレーキレバーを握った圧力の上限を制御するバルブ機構、さらにアダプターとOUTBRAKER自体混入エアが溜まりやすくなります。
ブリーディングの際はレバーを握る→開放を繰り返しますがオイルラインの中間に障害となってしまうOUTBRAKERは一度0(介入なし)にしておくと混入エアが抜けやすくなりました。
またRCTの場合、マスターシリンダーが混入エアの抜きづらさでわりと有名なMAGURAですので完成当初の通常メンテナンスの際にブリーディングも一緒にやりました。
経験上完成後2回ほどブリーディングすれば混入エアはなくなりますのでレバーを握った感触がさらにダイレクトになりました。