自転車のカスタムで使う<br>アルミニウム合金・ステンレス合金を知る

自転車のカスタムで使う
アルミニウム合金・ステンレス合金を知る

系統によって特徴が異なる合金をある程度把握しておきたい

前回をさらに掘り下げていきます。

自転車のカスタムを進めていく上で<br>最適な金属素材とは
金属の特性を把握して適材適所で使いたい
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ひとことでアルミニウム合金・ステンレス合金といっても系統によって特性が異なり、当然用途も異なってきます。

今回は特に自転車で使われることが多いアルミニウム合金とステンレス合金についてまとめてみたいと思います。

アルミニウム合金 – 注目のJIS記号3選

アルミニウム合金はというと7系統、JIS呼称でも45種以上あります。

参考サイトから自転車に最適なアルミニウム合金を絞ってみたいと思います。

アルミニウムは軽い反面柔らかく、酸とアルカリで腐食する特質があります。

それらを少しでも改善するのが合金ですが、自転車に最適かと考えると比重が軽く耐食性に優れる5000系(Al−Mg)、アルミニウム合金に中で最も強度が高いが若干耐食性に劣る7000系(Al-Zn-Mg))の2系統に絞られるのではないかと思います。

その中で個人的に注目したいJIS記号を3つ選びます。

A5083非熱処理型合金(1000系、3000系、4000系、5000番)の中で最高強度かつ比重が軽いAl-Mg系合金
A6061耐食性が良好でT6(焼入れ・焼戻し)処理によってかなり高い耐力値が得られるAl-Mg-Si系合金
A7075超々ジュラルミンと呼ばれるアルミニウム合金の中でトップクラスの強度だが耐食性は劣るAl-Zn-Mg系合金

こう見るとアルミニウム(Al)に添加元素としてマグネシウム(Mg)が含まれ、6000系ではシリコン(Si)が、7000系では亜鉛(Zn)が入ることでそれぞれの特徴を出しているのでしょう。

市販されているパーツの詳細で『7075』、もしくは『超々ジュラルミン』を唱ったアルミニウム合金製が散見されます。

要するにこのアルミニウムは強度が高いですよ!ということですが、反面耐食性に劣ることを忘れがちになってしまいます。7075は使用用途や日々のメンテナンス時には確認することが大事になります。

アルミ製です。と書かれていてそのJIS記号まで記載されていたらもう一つ選ぶ楽しさと迷う要因が増えるのかもしれません。

ステンレス合金

ステンレス合金のJIS規格では65種類が規定されており、海外の規格も合わせると200種類以上あるといいます。

JISでのステンレスの記号は「SUS:3桁の番号:(記号)」の構成となっています。

ステンレス合金は一般的に大分類として3種と種類が少ないことからアルミニウム合金と比較してわかりやすいです。

3桁の番号分類引張強度耐食性磁性熱処理での
強度
300番台オーステナイト系なし×
400番台フェライト系あり×
フェライト・オーステナイト系あり×
マルテンサイト系〇(焼鈍)あり
600番台折出硬化系あり
※折出硬化系は熱処理後のみ規定される(引用元:https://sadoseimitsu.com/column/1-8/)

オーステナイト系ステンレス(300番台): SUS304、SUS303、SUS316など

ステンレス合金でよく耳にするのが『SUS304』ですが、この分類です。

最もサビづらく、靭性もあり、磁性のない素材です。ただ応力腐食が起きやすいことから海水などでの使用には注意が必要です。

靱性(破壊に対する感受性・抵抗)が高いため切削加工が難しい材料です。

『SUS304』はニッケルが入っているため高価な材料ですが、これに硫黄やリンを添加して耐食性を落とす変わりに切削などの加工をしやすくしたのが『SUS303』となります。

余談ですが高専卒業後の入社したての頃、OJT研修の一環で工場にある組立ラインの管理部署に一時配属された際、その部署の先輩に治具設計と設置(加工は社内にある別会社)を任された(丸投げされた)ことがありました。

確かに学校では素材の違いなどを習ってはいましたが、勝手がわからず(先輩からのチェックもなく)すべてをSUS304で指定して加工してくれる別会社に図面を持ち込んだところ、その加工会社の大御所からこっぴどく叱られたことを思い出します笑

そこで代表される金属素材の性質や加工性、価格などを事細かに教えてもらったことによって『土台はSSでいいや』とか『焼入れして使うからS45Cにするか』とか防錆や強度が必要なところで加工が多いところは快削ステンレス鋼、通称エスサンマルサンの『SUS303』で指定したりで用途によって使用する材質を分け、求める性能は当然維持しつつ如何にコストとのバランスを取ることの重要性を学びました。

・フェライト系ステンレス(400番台): SUS440C、SUS416、SUS430J2など

400番台は炭素が多く添加されていることが特徴です。

炭素鋼より引張強度、耐食性共に優れていますがオーステナイト系よりは劣る分安価な材料となります。

400番台でも引張強度が高く熱処理をすることでHRC58以上の硬度に上げることができる『SUS440C』や切削性に特化した『SUS416』、工業用や一般家庭用で汎用的に用いられている『SUS420J2』があります。

それぞれ用途やコストとのバランスで使われていますが、ステンレスでも磁石でくっつくようでしたら錆に注意しなければいけない安価な材料だと思って大きくは間違ってないと思います。