来るべきフルリペアのためにパーツ購入と事前に英製油圧式異径4ポッドキャリパーの中身を知る
新しい仕事を受けてからやることが多く、通勤くらいしか自転車に乗れてません。
ちょっと時間ができたときに計画していたブレーキキャリパーのフルリペアに向けて、まずはリペアパーツの入手とパーツのイラストを見ていて疑問に感じていたため念のため手元にある予備のキャリパーを分解してみたいと思います。
かなり長い記事になります。
RCTのブレーキ換装の経緯
RCTカスタム計画で軽量化の重要なポイントとしてチョイスした油圧式ディスクブレーキは英製の『hope』です。
カスタム当初は前後共にポストマウントだったことからキャリパーは本国サイトでは終売になっている旧『RX4』、マスターシリンダーはリペアパーツとして売っていた独製MAGURAの『HS33』をチョイスしました。
しかしフロントフォークの思わぬトラブルから換えた新しいフロントフォークはフラットマウントだったためリアはそのままにフロントだけ新しくフラットマウントのキャリパー、『RX4+』を購入して装着しました。
しかしこの『RX4+』、いきなりブレーキフルード漏れが発生して新品に交換するというトラブルもありました。
新品に交換後はトラブルはありません。
そして知り合いのMTBを試乗した時に目からウロコが落ちたMAGURA MT7のソフトなタッチに感化されてマスターシリンダーをリペアパーツで売られていたMAGURA MT4に換装して現在に至ります。
MT7とまではいきませんが、同じラジアルマスター式なのにHS33とは全く異なるブレーキの柔らかいタッチは個人的にお気に入りのパーツのひとつになりました。
ある読者様からのコメントと構造上の疑問
hope RX4+に換えてブレーキフルードが漏れたポストを読んだ読者様からその原因について詳細なコメントをいただきました。
要約するとブレーキフルードが漏れる原因は『ピストンシールの品質が悪い』ということでした。
その時は新品に交換したキャリパーに問題はなかったため知識として共有させていただきましたが、いずれフルリペアすることを考えていたため非常に有用な情報でした。(スズキユウジ様ありがとうございます)
この図はキャリパーの取扱説明書裏面に掲載されています。
構造としては何てことないのですが、ピストンにアクセスするためにはhopeオリジナルの特殊工具(図最下段の2つ)が必要なことがわかります。
しかしこの図をよく見るとひとつ疑問が生まれます。
ボアキャップ側ピストンへのアクセスは容易に思うのですが、車輪ハブ側のピストンはどうやって取り出すのか?
これについてはぶっつけ本番で確認するのはリスクが高いため前もって自分の目で確認した方がいいに決まってます。
昨年8月下旬に特殊工具含め、ピストンやシール類他メンテナンスに必要なパーツを購入しようと問い合わせてみましたが一番肝心の特殊工具のボアキャップツールやボアキャップはその当時『売り切れ(再入荷あり)』とのことでショップに問い合わせたところ12月予定とのことで入荷メールに登録しておき、在庫があったシール類だけ先に購入しておきました。
そして待つこと7ヶ月経った今年4月、再入荷の知らせが届きましたので即購入します。
リペアに必要なパーツ類
ついでにロード用の青いブレーキパッドも購入しました。
自転車の油圧式ブレーキに詳しい方はご存じだと思いますが、ブレーキレバー/マスターシリンダーのメーカーによって使うブレーキフルードが異なります。
- シマノ・カンパニューロ: 扱いやすくて劣化しにくいけど高価なミネラルオイル(疎水性)
- SRAM: 塗装面に付着すると剥がれるなど扱いにくいけどトラブルに強く安価なDOTオイル(親水性)
性能的な話はあまり詳しく書くと長くなるので割愛しますが要約すると以下になります。
ミネラルオイルは疎水性のためオイルに水分が混ざると分離するのでもしオイルの交換を怠っている等水分の混入量多い場合、あまり激しい使い方をするとペーパーロック現象が起きやすい
DOTは親水性のため水分が混ざるとオイルと混ざってしまうため水分が混ざったミネラルオイルよりペーパーロック現象は起きにくい
ベーパーロック現象とはブレーキオイルの沸騰により気泡が発生し、ブレーキの圧力を伝えることができなく起こる現象です。要約すれば『ブレーキが効かなくなる』という恐ろしい現象です。
自動車やオートバイほど重量的に重くない自転車ではあまり耳にしませんが、街乗りくらいならそこまで気にしなくてもいいかもしれません。
ただ長い下り坂を高速で下ったり積極的に山道を走る用途ではワケが違ってきます。
なにせ自転車は自動車やオートバイと違ってエンジンブレーキがないので減速の手段はブレーキか最悪自力で減速するほかないので用途によって気にしなければいけません。
また自動車やオートバイはすべてDOTオイルということから考えても(自転車やオートバイと比較して)とても軽量でそこまで速度が出ない自転車だからミネラルオイルが使われることになったと想定できます。
hope RX4(+)もミネラルオイル用とDOT用で分かれており、ボディ含めパーツも各々違います。
- ボディ
- ボアキャップ
- ボアキャップOリング(ボアキャップを単品で購入すれば専用Oリングは付属)
- ピストンシール
オイルが違う=シール類が違うということになります。
RCTはマスターシリンダーがMAGURAなのでミネラルオイルですから間違わないように購入しました。
ピストンにアクセスするためにボアキャップを回すための特殊工具『ボアキャップツール』です。
アルミの削り出しという何とも贅沢な造りをしています。大(HTTCTC)小(HTTCTB)各1個購入しました。
次いでボアキャップ。
6色あるので自転車のカラーやキャリパーボディに合わせて色を変えてみる楽しみもありますが、私は足元をブラックで引き締めたいためキャリパーボディと同色のブラックにしました。
ミネラルオイル用は大きい方にミネラルの『M』がプリントされてます。(DOTはDがプリント)
小さい方は一見ではわかりませんがサイズが違うとのことです。
前後なので大小各2個ずつ購入しました。(ボアキャップは+と無印で共用)
ちなみにブラックはすぐ売り切れるみたいで、現在また売り切れになってます。
次いで大小のピストンです。
こちらも前後なので大小各4個ずつ購入しました。(ピストンも+と無印で共用)
ちなみにピストンの直径ですが大はφ16mm、小はφ14mmです。
ピストンはミネラルオイル、DOT共用です。
次いで読者様が指摘していた問題のピストンシールです。
これはミネラルオイル用で、DOT用とは異なります。
前後4ポッドなので大小4個ずつ購入しました。
接続パーツ一式は共用で、使い回せるシュールドは2個、ブラスインサート、ブラスオリーブ、コッパーワッシャーは予備保管分含め4個ずつ購入しました。
次いでブレーキパッドを前後分購入しました。
減りにくいのに加えて、対フェード性能でも高いオーガニック素材のロード用です。
全部合わせておよそ3万円強・・・ 新しいのが余裕で1個買えます。
hope RX4の分解
幸い手元に以前フロントに付けていた『RX4』(RX4+と構造は一緒)がひとつ棚に眠ってますので予行演習をかねて一度バラして中身を確認します。
ちなみにこのRX4はブレーキフルード漏れなどなく本当によく動いてくれました。
ボアキャップツールがなくても回せるとは思いますが、絶対ボアキャップに傷が付いてします。
見た目を気にする場合はやはり購入しておいた方がいいでしょう。
ボアキャップを外します。
キレイにオイルを抜いていたつもりもキャリパーの中にかなりオイルが残ってましたのでオイルパンは必須です。
次いでボアキャップ側のピストンを抜きます。
かなり固いのでボアキャップ側から棒状のモノを使ってディスク面側に押し出しました。
ハブ側にはボアキャップがないのでピストンを裏側から押すことはできません。
ハブ側のピストンを抜くのであれば一度車体からブレーキセットを取り外してオイルラインもマスターシリンダーも付けた状態でマスターシリンダーを握って押し出す方法しか考えられません。(オイルパン必須)
ミネラルオイルなのでそこまで扱いに気を遣わなくていいですからぶちまけないように気を付ければ問題ないでしょう。
しかしピストンはそれだけでも抜けきらないと思うので、ラジオペンチなどで挟んで抜くしかありません。
抜いたハブ側ピストンの側面に傷が付く(ブレーキフルード漏れの原因に直結)と予想できますから再利用は難しいと思います。(ボアキャップ側は再利用可か?)
これがわかっただけでも意味がありました。
赤いリング状のモノがピストンシールです。
ゴム状といえど割と固く、厚いのでボディから取り出したらコレも再利用は難しいと思います。
図をよく見るとわかりますがピストンには裏表があります。
ボアキャップ側は内側の凹み部分の面取りが大きく、ブレーキパッド側は面取りがほとんどありません。
ピストンシールには裏表がある⁉
hopeのブレーキキャリパーでオイル漏れが起こる原因とされる問題のピストンシールです。
情報を共有してくれた読者様の情報を要約すると以下になります。
- 溶けたゴムを型に流し込んだような造りになっていて外周に4ヵ所ほど湯口なようなモノがある
- その湯口の切り方が雑なところがあった
- 外周部分にバリがあった
湯口の切り方が雑で凹んでいたり、バリが噛み込んで切れた結果ブレーキフルード漏れになったと想定されておりました。
しかし私が今回購入したピストンシールを手に取ってみると、明らかに型抜きしたゴムです。
その一番の理由は、小さいですが指先で触ってみると断面がわずかに台形状になっています。
これはゴムのような弾性があるものを型で抜く際に起きえる現象です。
証拠に新品のピストンに入れてみると明らかにピストンシールの表と裏とでは入りやすさが変わります。
台形の頭側(内径が広い)は入りやすく、台形の底側(内径が狭い)だと入りづらいんです。
ということはこのピストンシール、ボディに装着する際に表裏を気にして入れ込む必要がありそうです。
油圧の構造上、ピストンのディスク側から入りにくい側で装着するのが正解ではないかと推測されます。
さて私の推測が合っているのか、間違っているのか。
やがて来る実作業完了後の試走で判明するでしょう。