同じメーカーなのに換えてみたらやっぱりヤバかった
SAVANE FDB169Sは純正でシマノの油圧ディスクブレーキ(ポストマウント・前後φ140mm)です。
今回のカスタムでアルフィーネ11という純正カーボンフレーム(1.386kg)より重い1.7kg近い内装変速機を付けるため、とにかくできる限り軽量化を図る目的で探したブレーキ関連はシマノではなく自転車では珍しいラジアルマスターシリンダーの独製マグラに、ブレーキキャリパーはアルミ削り出しモノブロックで4ピストンの英製ホープにしたことでセットで203gというウェイトを実現しました。
カーボンフォークの関係上、フロントのみフラットマウント化するためhope RX4+を導入した際、初期不良のオイル漏れが発覚して新品に交換して以降制動系のトラブルは皆無でした。
しかし目からウロコが落ちたのはつい先日です。
本格的なフルサスMTBに乗る方がマグラのブレーキセット(MAGURA MT7)だったので話が弾み、少しだけ乗らせていただいたのですがとにかくタイヤの空気圧もですがサス含めすべての挙動が柔らかく優しい乗り味で、その中でも一番驚いたのが同じマグラなのに全然フィーリングが違うことでした。
レバーを1フィンガータイプに変更している以前に握り初めから奥までとにかく軽い握力で、回転するブレーキディスクをパッドが挟んで生まれる抵抗力の強弱がレバーを通じて感じられるくらい繊細なフィーリングです。
ラジアルマスターシリンダーの利点はレバーとピストンの支点と力点の違いなどから『握る力が軽い』のは理解してましたし、実際HS33も軽いと感じてました。
ただMT7と比較すると(個体差もありますが)HS33は握り初めから全然固めで、ここまで繊細なフィーリングはありません。
MT7はさらに驚くほど軽く、本格的なダウンヒルやトライアルに使う競技用だからこんなにも違うのか???というレベルです。
軽いショックを抱えてた中、たまたまパーツを眺めていたら目に留まったので念のため在庫を確認したら「ある」とのことで即購入。
今回は同じマグラでもMTB・クロスバイク・シティサイクル向けのMT4、マスターシリンダーのみを換装します。
MAGURA MT4とHS33の違い
マグラの中ではブラックにホワイトのプリントだけと大人しめのデザインだったMT4(2ピストンキャリパー)とMT5(4ピストンキャリパー)とで迷ったのですが、MT5はどちらかといえば競技向け用途となるのであえてMT4にしました。
もしこれで不満があればMT5に交換してもいいくらいの感覚です。
マグラは基本マスターシリンダーとキャリパーのセットで販売されているのですが、やはり山道や悪路での転倒による破損や故障など比較的多いことからなのか、スペアパーツとして単品でも販売されてます。
購入処理後、中1日で届きました。
HS33と比較するとまずその軽さに驚きます。
特殊樹脂カーボテクチャ製ボディなのですが違う素材に感じるくらい触った質感が異なり、アルミ製のレバーも軽いです。HS33はさらに所々が金属製のため重ためになっているのでしょうか。
実質ウェイト75.1g。
HS33は88.5gありましたので微々たる数値ですがそれでも片側で13.4g、両方で26.8g軽いです。
クランプのボルトは同一でクランプ自体もアルミとカーボテクチャでは1gしか変わりません。そもそも素材含めた造りが違うのでしょうか。
そして大きく異なるのがEBTスクリュー(給油口)の位置です。MT4はボディ脇両面にEBTスクリューがあるのですが、HS33は根元に1ヵ所だけとなります。
この形状の違いは特にメンテナンスの手間に直結します。
給油口に漏斗を付ける際マスターシリンダーを大きく上向きにして不安定な斜めに取り付き、片側だけなのでどちらか一方が上でもう一方は下になるHS33に比べ、MT4はそこまで上向きにしなくて真っ直ぐ漏斗が立つので安定します。
一度エアを抜き切ってしまえばそこまでイジる箇所でもありませんが、いざイジるとなるとこの違いは大きいです。
装着
まず装着する前に樹脂製のEBTスクリューをチタン製に変えます。
改善されたとはいえ、樹脂製のEBTスクリューは締める時少しでも力を入れると頭が割れてしまった忌まわしい過去があるためです。
バラして今まで着いていたトップピース、コンプレッションリングを切り飛ばして新しいモノに変えます。
ブリーディングもサクサク済ませて固定。
マスターシリンダー周辺を脱脂して完成。段取りさえしっかりしてれば1時間も掛かりません。
実走した感想
あくまで個人の感想です。
MAGURA MT7と同じようにとにかく握り心地が軽くて柔らかいのに驚いたこと、そして握った分だけキャリパーのピストンがリニアに動くのがレバーを通じて感じます。
街中での低速走行で、僅かな減速をしたい場合の自在なコントロールはHS33と比較すると段違いです。だからといってHS33が悪いということではなく、MT4が良すぎるという感じです。
あのMTBの馴染んだMT7と比較すると新品でまだ馴染んでいないのか若干握りに抵抗を感じますが全然問題ないレベルです。
一度知るともう別物。HS33が色褪せて感じてしまいました。
ラジアルマスターの特徴については上記をお読みください。
詳しい技術的な解説は上記をお読みいただくとして、通常の横置き式マスターシリンダーとラジアルマスターシリンダーのレバーを握る量と制動力との相関を私でもわかりやすく極端なグラフにしてみました。
どちらも(パッド、キャリパー、ライン、ディスク、タイヤ含めたホイールセットが同じ前提で)制動力の最大値は同じとします。
同じ制動力を得たい場合、横置き式マスターシリンダーだと急激に制動力が立ち上がるイメージなのでレバーを握る量が少なくて済む反面、握る量が狭いため中間帯のコントロールがシビアになってしまいます。
ですから横置き式は少しのレバーの握りでも急激に制動力が上がるので『ブレーキがよく効く』と感じてしまいますし、少しの減速を求めても雑なブレーキングだと必要以上に減速してしまいます。
逆にラジアルマスターは握る量で制動力がリニアに決まるので同じ制動力を得るためには握る量を増やなければいけない反面、握る量の幅が広めなので中間帯のコントロール性がよくなります。
多分理屈がわからずに横置き式マスターを使い慣れているとあまりのフィーリングの違いでブレーキの効きに不安を感じるかもしれませんし、苦手と思う人もいるかもしれません。
どちらが優れてるという話しではなく、運用の仕方や用途、個人の好みでも大きく左右されるので絶対はありません。
悪路でのダウンヒルなど相当な振動の中で瞬時に僅かな握り量をコントロールするのは至難の業なのでマグラはラジアルマスターシリンダーを選択したのだと思います。
もちろん横置き式マスターシリンダーでも様々な工夫やチューニングをされてリニアに近い効き味になったものもあるとサイクルショップのメカニックから聞いてます。
ただ私個人としてこのマスターシリンダー、慣れると逆に横置き式マスターが効き過ぎて怖く感じてしまいます。
また私の場合小径車特有のパニックブレーキによるフロントロック→前転回避のため、フロント側のみABSを装着しています。
装着してないリア側とのフィーリングに違いはなく、油圧の上限だけをカットしてくれるので本当に重宝してますし、過去パニックブレーキした時も大袈裟かもしれませんがセッティングが合っていれば『ビタ止め』の感覚です。
もしまた小径自転車カスタムをするのであれば油圧ディスクブレーキの場合、真っ先にマグラのマスターシリンダーとOUTBRAKER ABSはセットで変えてしまうパーツになると思います。
それぐらいブレーキのフィーリングが大きく変わり、安全性の確保と両立できます。
マグラは悪路でのダウンヒルやトライアルのような繊細なブレーキコントロールを必須とする自転車向きな性能でありますが、街乗りでもこのコントロール性は本当に秀逸に感じます。
ついでにグリップも新品に換装
カスタム当初から使っていたTIOGA Acentia E-グリップ(ショート)ですが、1年半弱使ってきたのでついでに新品に換えちゃいます。
PLATTのカーボン製フラットバーの肉厚が薄いので純正バーエンドのままだと固定できないのでゴムの部分を太い物(左)と交換してます。
カネミツ たわみゴムで外径18mmが最適です。
やっぱり新品はいいですね。