『純正ジョイントセット』のピンを見て感じた違和感は間違いありませんでしたが実際解決する方法はあるのか考えます
SAVANE FDB169Sのフレームを、メーカーが想定するであろう運用方法よりも負荷を掛けて乗ってきた結果、1年3ヶ月で折りたたみヒンジ部が寿命を迎えました。
原因は2つです。
- ヒンジの保持力を維持するためのピンが振動により調整するためのネジ山が潰れた
- フレーム側のピンが曲がった
探して見付けたSAVANEの純正パーツを売るサイト『SAVA DECK』と国内販売代理店より純正ジョイントセットを購入して付け替えた結果直ったかに思えました。
しかし純正ジョイントセットを見た時に感じた違和感は間違いありませんでした。
新しいピンは違った理由で寿命が短い
早速フレーム側のピンもヒンジ内ピンも新品に換え、順調に走っていましたが購入当初と比較しても早いタイミングでフレームにガタが出ることに気が付きます。
ヒンジの保持力がすぐ下がってしまうということです。
2日に1回くらいだとさすがに何か原因があるはずだと思います。
ヒンジ内ピンを締めれば(出代を出せば)いいのですが、固定された位置から動いてませんし緩んでません。
どうやらピン自体が緩んでいるのではなく短くなっている?状態のようです。
そこでふと気が付きます。
加工法が変わったピンを見て感じた『違和感』
左が先だって購入して装着しているジョイントのピン、右はボルトの山がなめて使えなくなりました(これがそもそもの原因)一昨年10月に購入したSAVANE FDB169Sに着いていたジョイントのピンです。
加工法が変わったことはジョイントセットを購入して実物を見た当初からわかっていましたが、同時にその加工法に違和感がありました。
わかりやすくイラスト化してみました。
ヒンジ内ピンにはヒンジを締めた状態だと構造上ヒンジの保持力を維持するために大きな赤矢印方向に応力が掛かります。
大きな応力が掛かるから頭部が潰れてきますので短くなった分をネジを回して出代を出すことで保持力が維持されます。
ただご覧の通り大きな応力が掛かるパーツなのに購入時装着品と異なり純正パーツ購入品は頭部を支えている2mmのピンだけで受けていることになります。
フレームのガタつきが早く訪れる原因はこの接合部が応力で潰れてくることが原因だと仮定しましたので実際見てみます。
新品のピンはボルト部が90°近く回りました。
それが一度装着して何度かガタつきが出てくるのをボルトを回して解消するのですが、外してみると90°近く曲がることができた頭部が回らなくなってることがわかります。
要するに応力で今まであった隙間が潰されたということになります。
隙間が潰されてここで固定し続けてくるのであれば保持力は保ってくれますが、後はボルト部が調整できる範囲であれば使えます。
購入時装着品(自転車に元々着いていた)が1年3ヶ月も持った理由は、この応力の受け方がボルト部の頭部の面で受けていたので保ったのではないかと想定できます。
コストの問題なのか強度的な問題なのか不明ですが、何でこんな加工法にしたのか疑問に思います。
抜本的な解決策を考える
マウントアダプターの追加工を依頼した金属加工会社の担当者と懇意にさせてもらっているので叩き台の図面を作って一度ヒンジ部含め現物を見せながら相談します。
ヒンジ内ピンは構造上、圧縮応力だけで引張応力は掛かりません。
純正のヒンジ周りの応力を直接受けるヒンジ内ピンやフレーム側ピンはステンレス合金製ですが磁性があることからSUS400番台と思われ、400番台は炭素が多く添付されているため切削性はいいものの錆びますが安価です。
炭素鋼より引張強度、耐食性共に優れていますが同じステンレス合金の300番台(オーステナイト系)と比べると強度、耐食性共に劣ります。その変わり300番台は高価です。
購入時装着品の加工法をベースにして頭部をSUS304で新規製作、コストを抑えるために市販の六角穴付き止めネジ(SUS)を追加工する方法です。
「現場と相談してみる」とのことで持ち帰っていただきましたが、翌朝電話が掛かってきました。
「そもそもコレ、一体で作っちゃダメ?工数が掛かって結構な割高になりそう」
「そりゃ一体で作れてコスト抑えられるならそれに越したことはないよ」
・・・でも純正は何でこんな作りにしているのか疑問が湧いてますので一時製作はストップを掛けてヒンジ周りのパーツを再度眺めます。
ピンが途中で折れる構造にした理由を想定すると一番はメンテナンス性なのではないかと思います。
新車時はいいのですが走っていくとピンの頭部が潰れてくるため、潰れた頭部がヒンジのガイドに引っ掛かって外側に抜くことができなくなるのでヒンジ根元側に抜くしかありません。
ただヒンジ根元側は緩やかなR状となっているため、一体型だと当たって抜けないので少しでも曲がってくれれば抜くことができます。
さてどうしたものか・・・
ヒンジの各部を計測してピンの傾きをシミュレートしながら一体化で製作できないものか考えます。
計算して辿り着いた『一体型のピン』
シミュレートして目星が付いた寸法の組み合わせで懸案のピンのネジ部延長、さらに一加工加えることで計算上は一体型でもいけると思われるピンの図面を描きます。素材は高価ですがステンレス合金の中でも強度、耐食性共に優れたSUS304の削り出しにします。
一先ずコレで製作のゴーを掛けました。
幸いヒンジは手元に3つありますので万が一外れなくなったらヒンジごと交換するか、ピンのネジ部で切断するという荒技もあります。
さてどうなるか、届くのが楽しみです。