一番やってはいけない測定ミスからわかったGates Carbon Driveとベルトドライブのポイントまとめ
この記事の内容を汎用的にまとめたものが上記にあります。
なおこのポストはこれ以外3つに分かれておりますので参考にする場合は3つをしっかりお読みください。
たまにInstagramのDMで質問される内容の多くがやはり”フレームエンド”についてです。
あくまで私が経験した内容の詳細をまとめてみたいと思います。
Contenst
フレームエンドの種類
- ストレートドロップエンド
- ロードエンド(逆爪)
- トラックエンド(正爪)
昨今では加工精度の向上もあってシングルスピードを除く変速機能付きフレームエンドは概ね『ストレートドロップエンド』だと思います。
Gates Carbon Driveのベルトドライブ化カスタムをする上でベルトを引っ張る(テンションを掛ける)ことが指定されているため、本来であればロードエンド(逆爪)もしくはトラックエンド(正爪)のフレームが推奨されております。
しかし小径折りたたみ自転車でエンド幅が135mm、ロードエンドもしくはトラックエンドのフレームというのが市場では見つけることができませんでした。
もしやろうとすればシングルスピードの小径車を購入してリアのエンド幅を拡張するという方法はありますが決して初心者向きとは言えません。
個人的には多少機械の知識はありますが自転車のカスタムにおいてはズブの素人、初心者です。
ですから今回、敢えて大きなチャレンジとして人柱的にストレートドロップエンドでベルトドライブ化(Gates Carbon Drive)+内装変速(ALFINE 11)ができないか?というのがこのカスタムの裏の目的でもありました。
最悪失敗することも覚悟の上でしたが運良く無事成功しました。
一番運がよかったのはフレームのリアセンター(BBセンターから後輪車軸までの寸法)がスプロケット比とベルトのピッタリな組み合わせがあったことでした。
ただそこに辿り着くまで測定ミスや安全策をとったことなどで余分な出費はありました(=_=)
一番やっちゃいけないところで痛恨の測定ミス
種明かしをしますと一番重要な寸法を測定する際にミスをしました。
Gates Carbon Driveのベルト長を決める上で一番重要な”リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターの寸法)”は375mmでした。
後で気が付きましたが、実測風景を見てわかるように下に板など敷いてしっかりフレームの水平・垂直を出した上で補助線などを引いて測っていればよかったのですが実際は斜めになってます。
BLOG用に撮影しておりますが、実際は組み付け後に板の上でフレームの水平・垂直を出した上で補助線を引いて測ってます。
斜めで測った実測値375mm、実際は370mmだったこの測定ミスで生じた誤差5mmが今回のGates Carbon Driveのベルトドライブ化カスタムで個人的に一番勉強になった内容です。
測定ミスからわかったこと
測定ミスであるリアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)375mmをベースにCarbon Drive Calculator(エクセル版)で計算していきます。
当初はALFINE11推奨のスプロケット比1.8〜2.0を目標に組み合わせを探すのですが、F55T-R24Tの2.29の組み合わせでベルト108Tの場合にCenter Distance 372.9mm、Take-up Adjustment for Tensioning 374.9mmが見つかります。
375mm(測定ミス寸法)と思い込んでますのでこれでイケると思います。ですがもし仮に実際375mmだとしたらCenter Distanceの数値が-2.1mmも短いこのベルトでは逆に組み付けられませんでした。
が、組み付けている最中後輪がやけにすんなり入ったので再度測定してミスに気が付いて愕然とするも代えはありません。仕方なくこのまま進めることにします。
実際のリアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)は370mmですからCenter Distanceが3mmほど長いので上の画像をよく見るとわかりますが、テンションが掛かってないのでベルトが真っ直ぐ張られていません。
ベルトは人力では1mmも伸びません。
不幸中の幸いでベルトが約3mm長かったので組み付けることはできました(短かったら組み付け自体できません)がGates Carbon Drive非推奨の運用にならざるを得ませんでした。
ただこの状態でも街乗りやゆるポタ75kmなどの通常運用レベルでしたらベルトが脱落するとか歯飛びするなどのトラブルは一切なく800kmほど走れました。
そしてALFINE特有のペダル逆回転の抵抗が当たり前ですが一番軽かったです。
スプロケット比の変更で試してみたこと
いずれにしてもこのカスタムの計画当初より一番懸念していたのがベルトがフレームのスイングアームに干渉しないかどうかでした。
純正はF53T、R11T-25Tでしたので多分問題ないと思っていたのですがやはりベルト幅が12mmありますので”絶対に”という確信はこの時点ではありませんでした。
ただF55T-R24Tの2.29では干渉することなく結構スペースができましたので安心しましたが、3次曲線のスイングアームですので図面化しづらくFスプロケットをどこまで大径化できるかこの時点では不明でした。
コスト度外視のエイヤーでいく手もあったのですが、Gatesのパーツは発注後約3週間ほど掛かってしまうのでなかなか踏み切れずにいたのも事実です。
リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)が5mm間違ったことよりも2.29のスプロケット比だと街乗りスタート6段・巡航11段とまだ上が回せるのでいずれにしてもスプロケット比変更と合わせてベルトも再計算します。
F63T-R22T 2.86 ベルト111T
そうして最適だと辿り着いた組み合わせはF63T-R22Tのスプロケット比2.86、ベルト111TでCenter Distance 369.9mm。ほぼピッタリです。
いずれにしても前後スプロケット、ベルト共に全交換となりましたがここまでは覚悟していたというか想定の範囲内です。(そんなカンタンにいくはずない)
FスプロケットとベルトについてはAliexpressで購入できましたが、RスプロケットはeBayで販売者がリトアニア(バルト三国・旧ソビエト)ということで到着にズレが生じます。
案の定Rスプロケットが届く1週間前にFスプロケットとベルトが到着しました。
そこで試験的にこの組み合わせができるかを試してみました。
F63T-R24T 2.63 ベルト111T(試験的)
Rスプロケットが届かないので24TのままにFスプロケットとベルトだけを変更した場合です。
見てわかるとおりCenter Distance 365mmとなりますので逆に5mm短くなります。
入るワケないと思ってましたが少し工夫した結果、組み付けるだけなら組み付けられました。
ただ問題はテンションが掛かりすぎてクランクが回らなくなります。
この組み合わせでは走ることが困難なためすぐに取り外そうにもテンションが掛かりすぎてFスプロケットを先に外さなければリアタイヤが外れませんでしたので結構焦りました(~_~;)
結局F55T、ベルト108Tに戻してRスプロケットの到着を待ちます。
最終組付け
Rスプロケットが無事届きましたので最終組付けへ。
- リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)が370mm
- F63T-R22T ベルト111TでCenter Distance369.9mm
ストレートドロップエンドといえど実際後輪車軸の穴径はゆとりがありますのでマイナスドライバーや薄いスペーサーを噛ませながらGatesアプリで規定の40Hzくらいに合うところを見付けて袋ナットを締め込めば完成です。
上の画像を見るとわかりますがベルトがしっかり真っ直ぐ張っています。
懸念していたスイングアームとベルトのスペースは結果的に余裕があり、F70Tにしても問題ないと思います。
それと当たり前ですがペダル回転はベルトにテンションが掛かってない状態より抵抗があります。足で漕ぐ分には感じませんが、停車時にペダルを戻すときはやはり回りづらく感じます。
メーカー指定なので仕方ありませんし耐久性についてはまだはっきりわかりませんが、そこまで厳密にテンションを掛けなければいけないのか若干疑問に思ってます。
今回私の場合、カーボンフレームという特殊な素材でもあったのでむやみな加工はできませんでしたがこのフレームがクロモリやアルミだったらCenter Distanceの寸法を見て後輪車軸の穴を若干前後いずれかに(1mmほど)拡げるイメージで加工できればさらに対応のハードルが下がるのでは?という感想を持ちました。
まとめ
個人的な経験からわかったまとめです。
- フレームはGates Carbon Driveの継ぎ目がない輪っかのベルトが入ること前提
- フレームがインナーワイヤー仕様だとALFINE(非電動シフト)のシフターワイヤーの取り回しで詰む可能性あり(Fディレイラーの穴を使って取り回しができれば可能だが穴の向き次第)(ただしエレクトリックワイヤーのDi2は取り回しの自由度が高いので可能と思われる)
- リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)がCarbon Drive CalculatorのCenter Distanceでピッタリな組み合わせが見つかればストレートドロップエンドでもベルトドライブ化は可能(街乗り限定)
- ALFINE 11の推奨スプロケット比1.8〜2.0は26・27インチ向け
- 最適なスプロケット比は20インチであれば2後半、18インチで3超、16インチ以下だと純正よりローギアになる
- フレームがクロモリやアルミなどの金属製であれば後輪車軸を前後に拡大加工ができれば3.の寸法から1〜2mm差があっても規定テンションを掛けられる可能性あり
- 街中使用前提でリアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)と比較してCenter Distanceが3mm長くても問題なく走れる(800kmトラブルフリーも耐久性は不明)
- 逆にCenter Distanceが5mm短かったら組み付けられないか、組み付けられたとしてもクランクは回らなくなる
- ベルトのテンションを掛けるほど(正逆共に)ペダル回転の抵抗が増す
ストレートドロップエンドでのベルトドライブ化カスタムで一番のポイントはやはりリアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)とCarbon Drive Calculatorの組み合わせで導き出されたCenter Distanceの寸法です。
これが0.1mmとかの差であれば組み付けできますし、テンションはオリジナルのスペーサーを挿れるなりなどで工夫すれば規定の数値まで掛かります。
実際問題内装変速機にALFINEを使ってGates Carbon DriveのCDXでベルトドライブ化する場合、クランクが5穴であればFスプロケット7種(70T,63T,60T,55T,50T,48T,46T)、Rは3種(26T,24T,22T)ですからスプロケット比の組み合わせは21種しかありません。
ベルトは歯数での選択になりますが、通常の自転車で使うと思われるゾーンは2〜3歯飛ばしでありますのでタイヤサイズに合った最適なスプロケット比前後で組めそうな気がします。
ただ小径車、特に16,14インチになるとF70T-R22Tの3.18が最大なのでベルト歯数によって組み付けできるかどうか決まってきますし、純正よりさらにローギアな自転車になると思います。
さらにいえば3.の数値が+/-3mm以内であればストレートドロップエンドでもエキセントリックBBのような前後+/-3mmと狭い調整幅でもテンションの調整は可能だと思います。
[番外編]ベルトのテンションはそこまで必要か?
メーカー非推奨なので実走して得た個人的な感想です。
実体験でCenter Distanceが3mmほど長い状態(ベルトにテンションが掛かってない状態)で街乗り800km近く走ってもベルトの脱落や歯飛びは一切なく、違和感もありませんでした。
海外では後輪がクッションゴムで衝撃を吸収するBROMPTONの内装変速機+Gates Carbon Driveでのベルトドライブ化カスタムキットを販売しているビルダーもいます。
ちなみに上の画像、ベルトに規定のテンションまで掛けていないと思われます。
テンショナーに見える白い歯車はBROMPTONの純正と同じようなフレームを折りたたむ時にチェーンが外れることなくスムーズに畳まれるための仕組みをベルト用にした感じです。
ビルダーの商品説明にも記載されているとおり低張力とのことですがメーカー非推奨のベルトを折り曲げる、折り返すためにアームで引っ張ってます。もちろんストレートドロップエンドです。
MTBのようにストロークが長いサスペンションシステムが付いている自転車は別にして、街乗り限定でクッション材による衝撃吸収ダンパー(BROMPTONやBirdy)くらいであればCenter Distanceの寸法が合っている前提でベルトテンショナーがなくてもそんなに大きなトラブルなく装着できるのでは?と感じます。
ではどのくらいの寸法まで車軸が動いて大丈夫なのかについては実際自分でカスタムしたわけではないので想像の話しですが・・・
例えばbirdy Rohloffを題材に使ってみます。
リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)が425mm、F52T-R13Tとのことですからスプロケット比4.0になります。
RohloffはALFINEよりローギアになりますのでGates Carbon Driveのリアスプロケット19Tがあります。(ALFINEは22Tが最小)
Gates Carbon Driveのスプロケット比で4.0はないのでRohloffを使う場合の最大F70T-R19T 3.68(125Tで433.7mm)、R20T 3.5(125Tで431.2mm)などスプロケット比3半ば過ぎでベルトを組み合わせてもCenter Distanceは425mmになりません。
組み合わせた結果F65-R22でスプロケット比2.95、ベルト122TでCenter Distance 425.2mm。もしくはF70T-R22T スプロケット比3.18、ベルト125Tで426.3mm。
純正よりスピードは落ちますが、後輪を折りたたんだときのベルトの扱いをどうするかだけ考えればRohloffのベルトドライブ化ができそうですし、何よりbirdy Rohloffの本体価格に前後スプロケットとベルトだけで考えたら今回のカスタムより低いコストで済むのでこれもアリかなと妄想してみました。
ALFINEを用いた場合のGates Carbon Driveの最大スプロケット比
ちなみにRスプロケットが最小の22TのままでF最大70Tにした場合、ALFINEでGates Carbon Driveを運用する場合の最大スプロケット比3.18で、私のRCTに装着する場合はベルト115Tになります。
Center Distance 370.1mmなので問題なく入りますが、このスプロケット比ですと私の場合は平坦な道でしか運用できないと思います(-_-;)
ただ状況を見てFスプロケットとベルト、テスト的に購入してみようと思います。
現在はこれで運用してます。
小径車のALFINE + Gates Carbon Driveにおける最適なスプロケット比
あくまでALFINE11でGates Carbon Driveを使った場合です。
これはその自転車の『リアセンター(BBセンターから後輪車軸センターまでの寸法)』次第で最適なベルトが取り付けられるかにもよりますがそこは一旦置いておきます。
『タイヤ周長とペダル1回転の移動距離・時速計算』やスプロケット比を過去3種(2.29-2.86-3.18)の組み合わせで試した結果、個人的に感じた街乗りやちょっと遠出するくらいの使い方に最適なスプロケット比です。
- 20インチ451: F63T-R22T(2.86)
- 20インチ406: F63T-R22T(2.86) or F70T-R22T(3.18)
- 18インチ355: F70T-R22T(3.18)
- 16インチ349: F70T-R22T(3.18)※相当ローギア
あくまで個人的な感想です。
ギア比とスプロケット比から考えてALFINEを使ってGates Carbon Driveでベルトドライブ化するなら最小18インチくらいまでかなと感じてます。
ただベルトが取り付けられるという前提条件さえクリアしていれば技術的には可能ですし、ギア比がローでもご自身に内装変速化、ベルトドライブ化のメリットが上回るのであれば別です。
相当人柱的な内容でしたがストレートドロップエンドでのベルトドライブ化カスタム、個人的には完成できたと思います。
一般的に考えて、Shimano ALFINE SG-S7001-11にラピッドシフターSL-S700、小物セットでおよそ5.5万円。ホイールを自ら組めないのであればホイールにスポーク、ハブを別途購入した上で組み付け工賃が掛かります。
そこにGates Carbon Driveの前後スプロケットにベルトでおよそ3万円。
今回のパーツチョイスで考えると駆動系(ホイール、スポーク含)だけでザックリ〇〇万円超(為替相場次第)掛かるそういったコストを覚悟の上でできた自転車は?
私にとっては世界にひとつ。とても大切なアイテムとなりました。
走行距離1,200km超で今のところ不具合は一切ありません。
後は定期的なオイル交換をしていきながらどこまで走って行けるかを見ていきたいと思います。