[固定ポスト]各々カスタムする上で知っておくべき内容をコンパクトにまとめてみます
これまでカーボンフレーム折りたたみ小径車であるSAVANE FDB169Sカスタムの経緯として書いてきましたが、汎用的な内容にまとめた内容にします。
※リクエストがあったため『タイヤ周長・ギア比計算表』にグラフを追加しました(2023/8/31)
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ベルトドライブをリリースしているメーカーは2社
アフターパーツとしてベルトドライブをリリースしているメーカーは2社あります。
- Gates Carbon Drive
- Veer
Gatesは代表的なベルトドライブのメーカーとして有名でほぼすべての内装変速機に対応しておりますし、前後スプロケット歯数の種類、ベルトの長さも豊富にあります。
ただベルトドライブ化カスタムをする上で大きな障壁となるのがそのベルトの形状です。
チェーンのような繋ぎ目がない輪っかであることです。
このベルトの形状によってフレームの形状を選びますし、最悪シートステーを切断するような改造を必要とします。
Veerはベルトドライブに興味がないと知らない人も多いですが、Gates Carbon Driveと違う大きな特徴があるベルトドライブメーカーです。
その大きな特徴はベルトに繋ぎ目があることですから装着できるフレームのハードルが大きく下がります。
ただGates Carbon Driveと比べ、Fスプロケットは64Tか72Tの2つ、Rスプロケットも30Tか28Tの2つですからスプロケット比でいうと4種(2.13・2.28・2.4・2.57)だけとなりますので小径車向きではありません。
またRスプロケットの対応する内装変速機がShimanoかSturmey Archerの一部、そしてシングルスピード用ハブに対応する9スプラインの2種類だけとなります。
またセット価格が8万円を超えるという、ざっくりGates Carbon Driveの倍以上する価格となります。
それら含めてベルトドライブで多くの特許を持つGates Carbon Driveの半ば独占市場といっても差し支えありません。
ベルトドライブ化へのハードルはフレーム形状
どうしても自転車競技を基本とするロードバイクなどはUSI(国際自転車競技連合)が規定するルールでフレームの形状が決められているので(緩和されてきているとはいえ)どれも似た形状となります。
非USIフレームもありますが、数も少なく結構な値段がします。
繋ぎ目のない輪っかのベルトを装着できるか(Veerであればその限りではない)
URWAHN STADTFUCHS(上記画像)であればチェーンステーを分割できるので継ぎ目のない輪っかのベルトを装着できますが、そうでなければフレームに類する改造を施さなくてはなりません。
Instagramで『フレーム改造』と検索して対応できそうなショップに相談した方がいいと思います。
また小径車でたまに見る『チェーンステーのない』スイングアーム状のフレームであれば問題なく装着できます。
ベルトにテンションを掛けられるか(対処法はある)
現代の自転車はリアエンドのほとんどが『ストレートドロップエンド』です。
トラックエンドやロードエンドであれば後輪側でテンションの管理はできますが、ベルトドライブ対応を謳うフレームでない限り見付けることは困難です。
そうなるとボトムブラケット側で調整する手、『エキセントリックBB』です。ちなみにURWAHN STADTFUCHSはエキセントリックBBのようです。
ただ調整幅が+/-3mmくらいですからベルト長の選定には注意が必要です。
またこれはメーカー非推奨ですが、リアセンター(BBセンターからリア車軸センターまでの寸法)とスプロケット比とベルト長から導き出される寸法が+/-1mm以内であれば振動が少ない舗装路走行前提で個人的経験上、テンションを掛けずとも問題なく走行できます。
実際にはベルトがリアセンターより+3mm長くても街中走行限定でベルトの脱落はありませんでした。
※注意!
ただしベルトに掛けるテンションの管理が緩いのはあくまで舗装路で比較的振動が少ない運用のロードやクロスバイク、小径車などで山道などの悪路やアクロバティック的な振動が激しい運用を目的をするMTBやそれに類する自転車、ベルト長が長くなるタンデムやカーゴバイクなどはベルトの脱落が懸念されることからテンションは高めに設定することを求められています。
もし振動の激しい運用やベルト長が長くなる場合はベルトにテンションを掛けられるフレームか強めのベルトテンショナーが必須ということになります。
リアエンド
フレームの形状というハードルをクリアできたらエンド幅(O.L.D)を確認しておきます。
ベルトドライブで多段化する場合は内装変速機を使うしか選択肢はありません。ベルトドライブでシングルスピードという方もいるとは思いますが、それについては経験がないので割愛します。
内装変速機におけるエンド幅の基本は各メーカー135mmとなります。なお最近のディスクブレーキのロードバイク(ディスクロード)では142mm、MTB(スルーアクスル)では142mmが主流で148mm(Boost規格)もあります。
対応するエンド幅を見るとわかりますが、これは内装変速機の性能と一致すると思って構いません。性能については後述します。
チェーンでいう『チェーンライン』はベルトドライブの場合、『ベルトライン』になります。
例えば142mmのエンド幅にアダプターを付けて135mmにすることは可能ですが、ベルトラインを合わせることに難儀することも考えられますので注意しましょう。
135mm | 142mm | 148mm | 170mm | 177mm | 190mm | 197mm | |
ALFINE | 〇 | – | – | – | – | – | – |
STURMEY ARCHER | 〇 | – | – | – | – | – | – |
Rohloff | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
Kindernay | 〇 | 〇 | 〇 | – | – | – | – |
enviolo | 〇 | – | – | – | – | – | – |
なおSTURMEY ARCHERはモデルによってエンド幅が120mm、125mm、128mm、132mm、134mmなどもあります。
例えばトラックエンド、エンド幅130mmのアルミフレームがあった場合、シートステーに改造を施すのでであればついでにエンド幅を135mmに拡げてもらう(さらにディスクブレーキの台座も付けてもらう)という手はあります。(可否含めて業者さんに要相談)
内装変速機メーカー
多段化する場合は内装変速しか選択肢はありません。
入手性を無視して内装変速機をリリースしているメーカーは5社です。
SHIMANO
https://bike.shimano.com/ja-JP/product/component/alfine.html説明の必要がないメーカーです。アルフィーネの他、ネクサスもリリースしてます。
11速本体が定価で48,277円。8速で30,257円。小物セットやラピッドシフターSL-S700で1万円切るくらいですから一式6〜4万円となります。入手性と価格、後にも書きますが街中走行での性能とバランスがとてもよいです。
STURMEY ARCHER
イギリスのメーカーで現在は台湾に移転してます。折りたたみ自転車 ブロンプトンに使われている内装変速で有名です。こちらも国内の代理店はユーロバイクです。
内装5速でも1.7万円くらいから2万円少しと結構安いですが、ラインナップが多いのでよく調べないといけません。
Rohloff
ドイツのメーカーで内装変速機では有名なローロフです。内装変速で14段をリリースしており、国内ではMCインターナショナルが代理店をしています。
ローロフの変速はワイヤーですが2本で押し引きします。オリジナルのシフターではツイストシフターしかありません。アフターパーツでダイヤル式やGebla Rohboxを使ってロード用シフターを使うことができます。
価格は本体のみで174,900円。ディスクローターは4穴の専用品やシフターなど入れていくと20万円近くになるでしょうか。
Kindernay
ノルウェーのメーカー、キンダーネイはRohloffと(ギア比も含め)同じ内装14段を作っているメーカーです。
ただRohloffと異なった大きな特徴は脱着できるカップ構造で、カップにリムとスポークを組み込んでおけば内装変速機だけを取り外せるのでいくつかのホイールセットを作っておいて変速機だけを取り付ければ路面状況や環境によってホイールセットを変更することができるといういわば競技用を主体にしている考え方の変速機です。
また変速機構ですがキンダーネイは油圧でホース2本が必要となり、サムシフターンしかありません。
国内の代理店はなく、オンラインショップでの購入となります。
ちなみに価格は本体とシフター合わせて€1,871.02。150円換算でざっと28万円超(関税別)となります。
enviolo
オランダのメーカー、envioloは連続可変トランスミッション(CVT)で、手動で変速を必要としないので主にカーゴバイクなどに使われていますが国内の代理店や販売店はなく、入手には海外通販を使う必要があります。
TREKKINGとシフターで€440。150円換算で6.6万円となります。(関税別)
ギア比を見て『内装変速機』を決める
フレームのハードルを越えることができれば次は内装変速機の選定です。
内装変速機というワケですから何より内部ギア比を確認します。
SHIMANO ALFINE 8 | SHIMANO ALFINE 11 | STURMEY X-RX5 | Rohloff SH500/14 | Kndernay XIV | enviolo TREKKING | |
1 | – | – | – | 0.279 | 0.272 | – |
2 | – | – | – | 0.316 | 0.309 | – |
3 | – | – | – | 0.360 | 0.353 | – |
4 | – | – | – | 0.409 | 0.402 | – |
5 | – | – | – | 0.464 | 0.458 | – |
6 | 0.527 | 0.527 | – | 0.528 | 0.521 | 0.500 |
7 | 0.644 | – | 0.640 | 0.600 | 0.594 | | |
8 | – | 0.681 | – | 0.682 | 0.676 | | |
9 | 0.748 | 0.770 | 0.800 | 0.774 | 0.770 | | |
10 | 0.851 | 0.878 | – | 0.881 | 0.878 | | |
11 | 1.000 | 0.995 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 無段階 |
12 | – | 1.134 | – | 1.135 | 1.138 | | |
13 | 1.223 | 1.292 | 1.250 | 1.292 | 1.297 | | |
14 | 1.419 | 1.462 | 1.560 | 1.467 | 1.477 | | |
15 | 1.615 | 1.677 | – | – | – | | |
16 | – | 1.888 | – | – | – | 1.900 |
17 | – | 2.153 | – | – | – | – |
同じようなギア比を並べた結果が上記になります。
ちなみにスターメーアチャーにも8速はありますが、1段でギア比が1ということでハイギアード過ぎるため0.64がある5速(X-RX5)をチョイスしてみました。
アルフィーネはローでは0.5前半、14速勢(ローロフとキンダーネイ)の6段相当です。この14速勢のローは0.2後半とアルフィーネの約半分です。
ハイで2を超えるのはアルフィーネ11だけです。
そして何よりアルフィーネ11だけ『1』(直結)がないという、全段何かしらの歯車が噛んでることになります。
後でスプロケット比と合わせて考えますが、内部ギア比的にアルフィーネは街中での舗装路向きであり、ローロフなどの14速勢はローギアで相当なクロスレシオ(ギア比間が近い)ですから山道や悪路向き(MTBやグラベル系)という性質になります。
あくまで国内の街中や舗装路走行メインで考えた場合、ギア比、一式価格、油脂類含めた入手性はやはりアルフィーネが秀逸です。
逆にいえばアルフィーネやスターメーアチャーは悪路向きではないということです。
タイヤ周長から『スプロケット比』を決める
内装変速機を決めたらいよいよ走行性能を決定づけるスプロケット比を決めていきます。
ここではSHIMANO ALFINE、Gates Carbon Driveの『CDX』で進めます。
まずはリアセンターを計測(BBセンターから後輪車軸センターの寸法)しておきます。(SAVANE FDB169Sは370mm)
前後スプロケットの歯数とベルト長が関係しますので重要な寸法です。
スプロケット比の目星としては以下になります。
- 27インチ: 2前後
- 20インチ(451 or 406): 2後半
- 20インチ(406)や18インチ: 3超
スプロケット比などのカルキュレーターがWeb版にもなってます。
前後のスプロケット歯数、もしくは求めるスプロケット比を入力すればベルト長とリアセンター長の一覧が出てきますので便利です。
もちろん従来のエクセル版もあります。
- Fスプロケット(5穴)7種: 70・63・60・55・50・48・46
- Fスプロケット(4穴)5種: 55・50・46・42・39
- Rスプロケット3種: 26・24・22
F5穴で21通り、F4穴で15通りです。
※リクエストがあったためグラフを追加しました(2023/8/31)
Gates Carbon Driveのスプロケットを使ってSHIMANO ALFINE11&8の場合、タイヤ周長によって各段でどれくらいの速度が出るのか把握するために作ってます。
なお参考までにローロフ、キンダーネイ、外装変速11速との比較もできます。
薄い青ベタのセルは編集できますので様々試してみてください。(間違いがあったらお知らせください)
またあくまで机上の数値なので、空気抵抗やライディングポジションなど丸無視ですから参考数値となります。
ギア比で考えたらALFINE11でも20インチ(406)でGates Carbon Driveの最高スプロケット比(3.18)にするとDura-Ace 9000 11sと似たような数値になります。
ただケイデンス50rpmだとロードバイクでは低いですし、20インチ406でフラットバーの特殊なポジションである折りたたみ自転車の場合は11段走行だと中強度になりますから私の貧脚だと長持ちしません。
余談ですが、私のRCTの構成(20インチ406・アルフィーネ11・F70T-R22T)の変速各段をローロフで実現しようとすると単純にローロフ用リアスプロケットの最小19TベースだとF89Tで同じくらいの数値となります。
手堅い『ベルトライン』の合わせ方
私の場合はAliExpressで軽量なクランクを購入する予定も詳細な寸法が記載されていなかったため、あらかじめ実寸図面を描いてから各部寸法を割り出した上で幸運が重なったこともありました。
あくまでALFINEとGates Carbon Driveの組み合わせを前提に、このようなハードルを避けて時間を掛けてでも手堅くベルトラインを合わせてベルトドライブ化する方法はあります。
ただ軽量化にあまりこだわらないのであればeBayやUNIVERSAL CYCLEでGates Carbon Driveからリリースされているアルフィーネ用クランクセットを購入した方が間違いありません。
Gates Carbon DriveのCDXでALFINE用SURFIT 3-Lobeにはベルトライン違いのリアスプロケットが3種あります。
- XMN(43.7mm)
- XMN-U(45.5mm)
- XMN-D(Di2用41.7mm)
- BBやクランクを変更するなら先に購入(手持ちを使うのであれば除外)
- Carbon Drive CalculatorのCDXタブでご自身の自転車に合った前後スプロケットとベルトを探す
- 2.から導き出されたFスプロケットだけを購入
- フレームに2.3.を仮組み
- ご自身の自転車のフレームセンターからFスプロケットセンターまでのFベルトライン測定
- 2.で導き出されたベルトと5.の寸法に一番近いベルトラインの型番で1.で導き出した歯数のRスプロケットを探して購入 ※注
- Rスプロケットの規定ベルトライン誤差分をBB台座にワッシャーを噛ませてFベルトラインを合わせる
XMNはAliexpressで、XMN-UとXMN-DはAliexpressでなければebayで探します。
もしフロントのベルトラインが実測42.5mmだったら通常のXMNを購入し、最終組付け時にBBに1.2mm分ワッシャーでかさ増しすればピッタリ合います。
※注:このやり方のポイントはフロントのベルトラインが3種あるスプロケットのベルトラインとイコールか少しだけ小さいことです。例えばXMN-Uが最大ベルトライン45.5mmですからこれよりフロントのベルトラインが大きい、例えば46.5mmあるとBBを1mm薄いものに換えるかフレーム側を1mm削るということになります。フロントのベルトラインの最大は45.5mmということを念頭に置いてください。
なおBBもホローテックⅡやスクエアテーパーではベルトラインが変わってきます。※注のように最大ベルトラインは45.5mmですがスクエアテーパーでは最小XMN-Dを使って41.7mmとなります。
そもそも論
理屈がわかってしまえばなんということはありませんが実際今乗っている自転車をベルトドライブにして内装変速にするのはフレームに改造を施す可能性が高く、やはりハードルは高いと思います。
アルミやクロモリフレームのロードバイクもしくはクロスバイクをベルトドライブ化・内装変速化する上で必要なものを列挙してみます。
- フレーム改造費(シートステー分割、必要であればエンド幅拡張・ディスクブレーキ台座装着)
- 前後スプロケット(Gates Carbon Drive)
- ベルト(Gates Carbon Drive)
- アルフィーネ 11+小物セット(Shimano)
- シフター(ドロップならmicroSHIFT)
- エキセントリックBB(必要であれば)
- リアホイール組み(手組み)
ざっと見積もっても30万円以上になります。
自転車にそこまでコストを掛けるか否かは人それぞれですが、趣味とはいえ普通に考えるとかなり大きな金額になります。
今回私の場合は毎月の予算を決めて半年掛けて作ってきましたのでそういったやり方もいいでしょう。
例えば極論ですが『ベルトドライブ・内装変速の自転車に乗りたい』だけであればSAVANE FDB169Sを18インチ化(純正Fフォークにそのまま入る)して私がやったGates Carbon Driveの構成をそのまま移植すればもっと安価にできると思います。
- SAVANE FDB169S(車両代)リアセンター370mm
- 前後スプロケット(Gates Carbon Drive – CDX F70T-R22T)
- ベルト(Gates Carbon Drive – CDX 115T)
- 内装変速機(アルフィーネ 11 or 8)
- シフター(アルフィーネ用)
- 前後ホイールセット(18インチ)
極力コストを抑えて車両代15万+カスタム費用ざっと10〜15万円でトータル30万円以内に納まるのではないでしょうか。
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